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「うん、そう…パスポート二人分ね。頼んだよ」
パレルモから西へ向かう車の中、深く傾けた助手席で携帯電話の相手に指示を出す綱吉の声を聞きながら先を走る車を追い超すべくアクセルを踏み込むと、加速するエンジン音にかき消されないように骸は声を上げた。
「やはり、国外ですか?」
「ん…なんか逃げるみたいで嫌なんだけどさ」
すぐには無理でも、コントルノと“交渉”してナヴァーラや組織の動きを抑え込み、ジェンナーロとティーナがトラーパニで平和に暮らせるようボンゴレが保護するつもりだったが、コントルノのあの話ぶりではボンゴレが関わる事で却って危険な目に陥れる可能性の方が高そうだった。イタリア本土も安全とは思えない以上、綱吉に出来る最善の方法は、今もボンゴレの門外顧問を務める家光の力を借りて国外へと逃がす事だった。
検察局を退去したその足で二人を保護するべくトラーパニへと向かいながら計画を練り、数件の電話をかけてひと息ついた綱吉はシートに身を沈めると「でも結婚式は諦めてないからな」と言い放ち、骸は苦笑で応じた。
「貴方が結婚する訳でもあるまいし…」
「当たり前だろ…諦めるなって偉そうな事言ってたクセに、結局、ティーナにシチリアを捨てさせる羽目になるんだ。しばらくは落ち着かなくて結婚式どころじゃないだろうし、もしかしたら本当に花のない国に行く羽目になるのかもしれない…結婚式って女の子の夢だろ?せめて普通の夢をひとつぐらいは叶えさせてあげたいじゃないか」
「普通の夢、ですか……貴方にもあるんですか?」
「……オレ?」
前方を向いたまま問いかける骸の声に首だけ傾けて続きを促すが、ちらりとバックミラーに目をやるその横顔は緊迫感を帯びていたから「どうした?」と上体を起こそうとすると、片手でシートに押し戻された。
「…尾行られています」
「選挙絡み以外で、最近何かあったっけ…もしかしてナヴァーラ?」
「そこまでは判りません…ジェンナーロの組織の可能性もありますが」
「今までノーマークだったのに…」
何で今更?と車内の低い天井を仰ぎつつ、「もしかして、下手に刺激しちゃったかなあ」と零す綱吉に車間距離ぎりぎりでハンドルを切りながら骸は、「コントルノとどんな話をしたんですか」と大仰に嘆息した。
「大した話は出来なかったけどさ…オレとジェンナーロが接触したのは気付いてる」
「まさか、独立派のテロリストがマフィアと手を組むとは思っていなかったでしょうね…ジェンナーロの持つ情報が貴方の手に渡れば、流石のコントルノもシチリアにはいられなくなる」
「…先刻のあれも、やっぱ牽制?“自分の身が大事なら、これ以上下手に勘ぐるな”って事?」
「貴方が使った手と一緒ですよ。確固たる物証もないまま相手を揺さぶって自滅させようとする…勿論、コントルノが何枚も上手だったようですが」
「悪かったな…」
皮肉げな骸の口調に憮然と言い返す、その間も追手はぴったりと着いてきているようで、骸は小さく舌打ちすると綱吉に「ここ、踏んでて下さい」と足下を指さした。
「へ?…ここ、って?」
「アクセルぐらい判るでしょう?まさか足が届かないとか言いませんよね?」
「馬鹿にすんなっ!」
ムキになって言い返す綱吉を綺麗に無視すると、骸はカーブが切れて直線に差し掛かった途端にアクセルから足を離して片手でハンドルを支えたまま全開にしたウィンドウの縁に腰掛けた。
「うっわ!何してんだよ!」
突然失速した車に慌てて片足を伸ばしてアクセルを踏み込みながら叫ぶと、骸は「すぐ済みますから」と吐き捨て、いつの間にか手にしていた三叉槍を一気に車間距離を詰めてきた後続車に向かって放り投げた。
「えええっ!ちょっ、むくろっ!」
一瞬にして白い霧に包まれた追手の車から遠ざかりながら、運転席に座り直した骸はインターチェンジの標識にハンドルを大きく切った。
「時間がなかったので、簡単な目眩ましぐらいしか施していません。すぐに追いつかれるでしょうから、取り敢えず一旦降りましょう…このままトラーパニに入って二人に接触するのは危険です」
「判った」
トラーパニまであと数キロだったが致し方ない。倒しすぎた助手席を起こしながら、綱吉はパレルモの状況を確認すべく同盟ファミリーのボスへと電話をかけた。

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