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獄寺と山本は車を西へと向けた。ファルコーネ・ボルセリーノ空港、別名パレルモ空港は市街地から海岸線を走る幹線道路を車で四十分程の距離にある。しかし、山本は一度内陸を突っ切ってから北上するコースを選んでいた。敵に見つかりやすいように、獄寺はサングラスこそかけているが堂々と助手席に座っている。くわえ煙草でいつもの態度なのだが、見た目が全く別人なので、ハンドルを握る山本はどこか落ち着かなかった。
「…んだよ」
「いや…何か変な感じだなー」
「俺自身は鏡を見ない限りはわからねぇ」
吸い込んだ煙草の煙を外に向けて吐き出す仕草は獄寺そのものなのが、余計に違和感を感じる。山本は、改めて霧の守護者の力に感心した。
「…この道を戻る事になるとはな」
「ん?ああ」
この前日にパレルモから西に向かった荒野で、二人は捜していたルシエラを発見していた。
「…しかし、そんなに戻れねぇみたいだぜ」
獄寺はルームミラーに目をやると、くわえていた煙草を揉み消した。山本も後方を確認すると、アクセルを少し踏み込む。
「しばらくは振り回せよ」
「ああ、市街地を抜けるまでは適当に引っ張るぜ」
山本は車の後輪を滑らせながらドリフトでカーブを曲がり、狭い路地を抜ける。後方で起こる衝突音にチラリとミラーに目をやった。
「なんだよ、この程度で振り切れるのかよ」
無造作にハンドルを切った山本に、後方についていた車は対応しきれなかったらしく、壁に張り付いていた。大破したわけではないので、車を切り返してすぐに追って来るようだ。
「お前が化け物じみているだけだろ」
「そーかぁ?」
「撒いてしまったら意味ねーだろ。もっと適当に逃げろ」
「了解」
山本は車のスピードを少し緩め、真っ直ぐに郊外に向かった。そうして引き離したり追い付いたりしながら市街地を抜ける頃には、背後の車は三台にまで増えていた。助手席の獄寺は銃を確認してホルスターに戻すと、新しい煙草をくわえる。道路の両側は太陽の照りつける荒野だ。対向車がないのを見てとってか、追っ手がスピードを上げてきた。
「来るぞ」
「おう」
スピードを上げた一台が車を右側につけてきた。後部座席の男が構えた自動小銃(ルビ:オートマティック)が火を吹く。二人は反射的に首を竦めたが、至近距離からの弾は防弾ガラスにヒビを入れただけだった。追い抜きざま、回った車の中で男が手榴弾のピンを抜くのが見えた。
「山本!」
獄寺は叫ぶと頭を伏せた。山本はハンドルを右に切り、手榴弾の直撃を避ける。耳をつんざく爆発音とともに、車が軽く煽られた。続けざまに投げられる手榴弾を車を左右に振って避けていると、後部座席の男がもう一度銃を持ち出すのが見えた。
「げ、やば」
ハンドルを固定したまま山本が頭を伏せると、フロントグラスに着弾する音が聞こえる。貫通はしなかったが、フロントグラスは蜘蛛の巣をはったような細かいヒビが入った。顔を下げていた山本は、続けざまに投げられた手榴弾への対応が遅れた。
「獄寺!伏せろ!」
目の前で爆発した手榴弾の直撃は避けたものの、車は大きくダメージを負った。特に防弾ガラス製だったフロントは、細かいヒビが入っていたのもあって一部が崩れ落ちている。
「っざっけんな!!」
獄寺は、後部座席に用意していたM60機関銃を取り出しグリップで目の前のガラスを崩すと、前の車に向かって引き金を引いた。相手も防弾ガラスだった筈だが、至近距離からの装甲弾は後部座席の窓に続けざまに着弾し、そのガラスが砕け散った。その事に慌てたように前の車が右に大きく傾いた。山本は車のスピードを上げてその左側をすり抜けていく。その車を追い抜いた瞬間、獄寺は窓の外にロケットボムを放った。
獄寺の手から離れたボムは空に向けて弧を描いた後、背後から追いつくようにして相手の車に追いつく。運転手が慌ててハンドルを切ると、後続の味方の車に衝突する。そして驚愕の悲鳴を上げる間もなく、爆発したボムとともに二台の車が大破した。
仲間の車がやられたのを見て、残った一台がスピードを上げて追いついてくる。追突をする勢いで迫ってくるのを見て、山本はハンドルを持つ手の位置を変えた。
「ビアンコ!掴まれ!」
山本が叫んだ瞬間、獄寺は両足を突っ張り窓の上にある手摺りを握りしめた。山本は車のブレーキを思い切り踏み込んでタイヤをロックさせると同時にハンドルを右に力一杯切る。タイヤが白煙を上げながら車体は大きく一八〇度方向転換した。
追っ手の男達は、突如隣から消えた車に目を剥く。運転していた男が慌てて急ブレーキを踏んで振り返ると、空高く舞い上がったボムが角度を変えて一斉にこちらに向かってきた。
「!!」
腹に響くような爆発音とともに、車が炎上する。
山本は歪んでしまったルームミラーを直し、残っていたフロントグラスを全て肘で壊した。獄寺は短くなっていた煙草を揉み消すと、新しい煙草をくわえる。
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