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HAnG UP!!



綱吉達10代目ファミリーの初仕事だった「ヴァティカヌスの丘事件」も無事に終わり、臨時の家庭教師として呼び出されたコロネロもどこかの海に戻り、骸もヴィンディチェの牢獄に戻った。本部には事件以前と同じく並盛トリオと、未だ怪我の残るランボが久しぶりの休息を貪っていた。

ヴァティカヌス事件でも存分に破壊行動を楽しんだ史上最強ヒットマンのリボーンは、今宵、憂いの表情でワインを啜っていた。何本もの空瓶が足元に転がっているがその姿に酔った気配は全くない。色気さえ漂うその憂いの表情の根源は、今まで格下で全くもって相手にしていなかったランボについて、だった。思い出すのもむかつくので詳細は省くが、事件中にまずい状態に陥ったランボと十年越しの約束をしてしまったのだ。そもそも、その前にランボがリボーンにオメルタを誓ってしまったところまで遡る話なのだが、今それを蒸し返しても詮無いこと。リボーンにしては「うっかり」ランボのオメルタを受け入れ「不覚にも」十年後にランボの世話をすることを約束してしまい「あまつさえ」どうやら十年後のランボと自分はそういう関係にあるらしい、ということまで重くのしかかる。
これが仕事の事なら悩むことなく最良の方法で事務的に処理できるのに、殊更自分のこと、それも関知できない未来の案件となると流石のリボーンも手の打ちようがなく、少しは酔いたくなるというものだ。ところがどっこいマフィア界最強と名高い元アルコバレーノは酒も論外ではなく、生半可なものでは酔うことができなかった。最強に燃費が悪いのだ。
過去は変えられないが、未来は変えられる。
十年かけて軌道修正していけばいいだろう。
そうだ、そうしよう。それがいい。
リボーンにしては珍しく安直な回答を弾き出した。
もしかしたらワイン達が功を奏して、少し、酔っ払っていたのかもしれない。

「リボーンいる?うわ、酒くさ!!」
陽だまりのような明るさで綱吉が部屋のドアを開ける。
「ノックぐらいしやがれ」
「しなくてもわかるだろ。どうしたの?珍しいね」
晩御飯後も自主的に勉強していた綱吉は、ネクタイを緩めてシャツの袖を折っていた。確かに初夏の陽気がそこあそこに残って、夜でも汗ばむほどだ。リボーンは頬杖をついて綱吉をじっと見つめていた。
「リボーン?」
綱吉はリボーンが酔うとは微塵とも思っていないので、隣の椅子をひいてイタリア語のレポートをテーブルに並べた。
「獄寺君、今9代目の用事をやっているからさ、代わりに見てくれる?」
綴りも文法も全然自信ないんだよね。使いにくそうに万年筆の先を紙にひっかけながらリボーンに質問を続ける。
それを見下ろしながらリボーンは別のことを考えていた。
過去に同性を抱いたことがない、とは言い切れないが、少なくとも生徒に手を出したことはなかった。いや、あったっけ?あったかもしれないけれど、少なくとも10代目ファミリー(こいつら)にはまだ手を出していない。
リボーンは、何かを言い続ける綱吉の顎を指先で上げてじっと見つめる。出逢った頃からちっとも成長しない綱吉。いずれ自分の雇い主になるかもしれないボンゴレ10代目。その茶色の大きな瞳が自分を映している。相変わらず俺っていい男、なんて思いやしないが、いや、思ってもいい。
リボーンは綱吉の瞳に吸い込まれるように顔を寄せて、その唇を嘗めた。びくっと体を震わせて綱吉は硬直した。
「目を閉じろ」
ひっと声を上げて目を閉じたのは、長年の家庭教師への条件反射というものか。綱吉はぎゅっと目を閉じて後悔する。
違う、違うよ、オレ。絶対目を閉じちゃいけないって!
綱吉は死ぬ気で後悔しながらも死ぬ気で意識を手放すという楽な道をさっさと選んだ。手にしていた万年筆はワインの空瓶の横に転がり、絨毯にインクが染み込んでいく。
何の反応もない綱吉から身を離すと、リボーンはふらりと立ち上がる。茫然自失の綱吉を放置プレイで、部屋を後にするとしばらくして両手に書類を抱える獄寺に出会った。ようやく左手が使えるようになったが、シャツの袖から覗く包帯は目に痛いほど白い。
「リボーンさん、10代目をご存知ないですか?9代目から…」
リボーンはだん!と音をたてて獄寺を壁際に押し付け、まるで匂いを嗅ぐように銀色の髪に顔を埋める。
「リ、リボーンさ…ん?」
両手の書類が邪魔をしてなすがままの獄寺はみるみる間に顔を赤らめた。少々酔いが混じっているリボーンの白皙は妙な色気が醸し出されていて、その気がなくても当てられるようだ。
四番目と言いつつ一番付き合いの長い愛人、ビアンキと同じ硬質な美しさが際立ってきた獄寺は嫌いじゃない。
まるでビアンキにするように、指の背で白い頬を撫で、親指で唇をなぞる。
「リボ」
「うるせぇ」
リボーンは、確実に、間違うことなく、獄寺の口を塞ぐ。ここ数年は山本専用の獄寺だってイタリア生まれのイタリア育ちで一応それなりの経験がある、が、それこそ百戦どころか千戦、万戦練磨のリボーン相手では立ち向かうことなんてどだい無理な話で、手元の書類が一枚、二枚と絨毯に散らばっていけば、ちゅ、と小さな音をたててリボーンから止めが刺されて、かっくん、と膝の力が抜けてしまった。濡れた唇を隠すことを忘れ、頬を染めたままずるずると壁際に崩れる獄寺を捨ておいて、次なる標的を探すべくリボーンは立ち去る。
テレビの音がもれるプレイルームを覗くと、山本がランボに膝枕をして寝ていた。ゲーム機とコントローラーが足元に転がっているところから途中でうたた寝をしたと見える。山本にもランボのお守り以外の仕事与えねーとな。健やかに眠る山本の寝顔を間近でみつめてみる。ランボを床に払い―熟睡中のお子様は軟体動物のようにころんと床に転がった―空いたスペースに座ると、ソファの背に寄りかかってすぴーすぴーと眠る山本を自分に寄りかからせた。顎をくいっと上げて左右にためつすがめつし、涼やかな目元、鼻筋とキスを落としていけば、「ごくでら…」と山本は呟いて、リボーンの背中に手を回して額をすりつけた。
「ふむ」
リボーンの声と腕の感触の違いにアレ?と山本が目を覚ましたときは既に遅し。その唇はリボーンに蹂躙されていた。酷くぬめって柔らかいそれとアルコールの香りに包まれる心地よさに身を委ねてしまう。きれいに並ぶ歯を擽られ頭の芯がぼんやりしてくる。それが離れると、後を追うように舌が伸びる。その舌先を、ちゅ、と嘗めとり、ソファに山本を投げ捨てた足に、柔らかい牛柄の軟体動物が絡まってきた。半眼でそれを見下ろし、指先をそれの襟元にひっかけて、ズルズルと自室に引っ張っていく。
その姿はまさにドナドナ。市場に引かれる子牛そのものだった。
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