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パレルモはシチリア島の州都であり中心地でもあるだけに人も政治も経済も集中していた。
なぜ最大のマフィアと呼ばれるボンゴレがここではなく、東端のカターニアに本拠地を置いているかはボンゴレの謎の一つだったが、ビアンキはどうしてもこの街が好きになれなかった。フェニキア人、ローマ人、サラセン人、そしてノルマン人と次々と主が変わっていったパレルモは一一世紀頭に首都となった時から様々な国の建築様式が見られ建物一つとってもその複雑な歴史を表していた。残念ながら大都市特有の空気の汚れや異臭、繁栄の影に忘れられたままの建物が町のあちらこちらに綻びたまま放置されていた。繁栄と衰退、贅沢と貧困、判りやすい対極の存在はよりくっきりとその都市の人間性をも炙り出す。富は力ある者の腕の中に。力は富のある者の元へ。
京子達はガイドブックと実際の町の相違に少し驚いたが、これもまた「シチリアタイムですから」と流すことにした。
それにいくらビアンキ達の目に酷い街と写ろうが、観光客である彼女達にとっては田舎から都会ってこんなに違うんだな、程度にしか映らないだろう。ホテルへと向かう間もスモークガラスにぴったりと顔をつけて街の様子を次々と口にした。それぐらいこれまでの場所とは違っていた。
「フゥ太君、あのビラはなぁに?」
街のいたるところに選挙の候補者のビラが吹き溜まっていた。州都だけにその数は半端がない。地方でこそトトvsサルヴォという図式になっているものの、まだまだ選挙は一週間弱続くのだ。
「シチリアの州知事の選挙中でね、そのビラだよ」
「随分カラフルなんですね」
赤、青、黄色、競うように様々な色紙に顔写真、名前、スローガンが躍っていた。それが風に踊り、人に蹴られて吹き溜まりの中身が次々と変わっていく。まるで本物の議会のようにくるくると舞い上がっては新しいビラが収まっていく。
「やっぱりパレルモは騒がしいわね」
ビアンキは午後の和らいだ視線にサングラスをサンバイザーに挟み、左折の確認の為にバックミラーを見た。ランボの横でチャオが顔を上へと動かせていた。なにもない筈なのに。ましてや、犬の視力なんて殆ど無いというのに。ビアンキが外をチラと見ると、さっきと同じように候補者のビラが舞っているだけだった。


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