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「felicica!! ~俺を祝え~」(24山獄18禁小説アンソロジー) 寄稿 サンプル



「NO/TICE」 だい。

「…あ…ん、そこイイ…」
吐息と舌を絡める音が耳のすぐそばで聞こえて山本武の鼓動は一段と大きくなった。
なんてことない雑居ビルの中のバーは奥が深くて、そして男性同士がそこかしこで肌も露わに絡み合っている。性がどうであれ、裸体同士が絡み合う濃厚な空気には感情を狂わす媚薬のようなものが混ざっているようで山本の平衡感覚をぐらりと狂わせる。落とした照明の中、視界いっぱいで交わされるキスと愛撫と吐息と嬌声。粘膜を弄るねばつく音に肉がぶつかりあう扇情的な音。裸の肌の上を這う指先と握られた肉。山本は酩酊感に支配されつつある中、壁際に探し人をみつけた。壁際にしゃがむ彼は、正体を隠すように特徴的な銀の髪と碧の眸を別の色で覆い隠した獄寺隼人。二十歳を過ぎたのに細身の体で所在なげにくわえ煙草で辺りを物色している。泰然とした面持ちで深く抉れた襟元から覗く華奢な首筋を見せつけるように髪をかき上げる仕草は慣れた様子で、山本が声をかける前に別の男が手をかけて一言二言話しかける。どうするかな?とゆっくり近づくと思わせぶりに長い睫を伏せた視線が上がり、山本をみつけ花開くような笑みを浮かべる。獄寺の肩にかけた手を山本はゆっくりと取って「わりぃな」と追い払う。獄寺は嬉しさを隠せないように剥き出しの山本の両肩を抱きしめてキスを強請るようにあおのいた。自分にすがる獄寺を壁に押しつけるように立たせて腕で囲む。額に、眸に口づけを落としていく。




「蒼い鳥」 つねみ

俺はアイツを信じない。俺はアイツを信じない。

誰にでも調子のいい、気に食わない奴。それがアイツに対する第一印象だった。運動神経が良くて明るくて、絵に描いたような人気者は酷い仏頂面の俺にも馴れ馴れしくて、それが鬱陶しかったその頃はいつもイライラしていた。やがて一緒に過ごす時間が増えていっても、無神経で他人の気持ちに無頓着な人間だと改めて思っただけだ。中学から高校にはいると言い寄ってくる女と付き合うようになってきたが、長くても三ヶ月ともった試しがなかったから。「振られてるのは俺だぜ?」といつも言っていたけど、それはアイツが誰にも興味がないからだ。最低にも程がある。
ただ、何度も命をかけた戦いの中で、戦う味方としてのアイツは誰よりも心強かったし、アイツとは他の誰よりも息があった。それは戦闘スタイルの相性なのかもしれないが、仕事をする時にアイツと組むのは決して嫌じゃなかった。
それは不本意な腐れ縁を続ける十年後の今でも変わらない――筈だった。あの時まで。

「俺、ずっと獄寺のこと好きだった」

信じない――信じられる筈がない。だってアイツは最低な奴だから。
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